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解雇権濫用法理の類推適用

Q

解雇権濫用法理の類推適用

平成25年4月1日~平成26年3月31日までの雇用期間1年で5回更新して、6年目に入った。「入社の時にできるだけ長く働いてもらいたい」と言われた。3年目からは「あなたは仕事ができるから」と言われ、正社員が休んだ時には正社員の業務をカバーするようになった。
2月初めに「仕事量も減ってきたし、年齢構成のバランスから新卒の正社員を採用したいとも考えており、次の更新はしないので承知しておいてもらいたい」と言われた。
契約社員には退職金もない。何も補償無しで辞めさせられてもやむを得ないのか。
契約の最初は、書面をもらい署名・押印したが、3年目以降は、自動更新になり、それ以来、更新の時に雇用関係を確認することはなかった。

A

法的ポイント

次の法令や判例で判断することになります。

労働契約法3条4(労働契約の原則)
「労働者及び使用者は、労働契約を遵守するとともに、信義に従い誠実に、権利を行使し、及び義務を履行しなければならない。」
労働契約法6条(労働契約の成立)
「労働契約は、労働者が使用者に使用されて労働し、使用者がこれに対して賃金を支払うことについて、労働者及び使用者が合意することによって成立する。」
民法1条2(信義則)
「権利の行使及び義務の履行は、信義に従い誠実に行わなければならない。」
労働契約法第16条(解雇)
「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。」

最高裁判例:S61.12.4日立メディコ事件、S49.7.22東芝柳町工場事件

アドバイス

仕事量が減ったと言いながら新規採用の考えを示すような、問題のある雇用止め理由、さらに、更新手続きが正しく行われていなかったこと、実態として自動更新状態の期間も含め6年に及ぶ就労状況があり、正社員と同様の仕事内容の時もあったことなど見ると、「期間の定めの無い契約に転化した」との推定も可能になることから単なる「雇用止め」ではなく、判例で確立している「解雇権濫用法理の類推適用」に該当し、裁判で勝利する可能性がかなり高い事案といえます。
相談者自身が、「どのように受けとめるか、どうしたいか」で対応は変わってきます。

  1. 「雇用止め」を受入れるとすれば、……離職票の離職理由を「会社都合」にすることの確認をすること。退職日から遡って年次有給休暇の残りを取得するか、職場事情で完全取得が難しいようであれば「特別に清算してください」と願い出てみるのも良い。
  2. 「雇用止め」は受入れるが、何らかの補償をもらいたい、……労働相談したら「単なる『雇用止め』」でなく『解雇権濫用』の可能性が高いとも聞いた。結果は分からないが、正社員の退職金を適用してもらいたい」などと請求してみるのも良い。会社が何も回答しない場合は、労働局や労働委員会のあっせん申請をするのも解決に向けた選択肢。
  3. 「雇用止め」を受入れない、雇用継続を求めるとすれば、……会社に「雇用止めは納得できない、継続雇用を求める」ことをはっきり告げて、会社側が拒否した場合は、連合静岡ユニオンに加入して団体交渉で解決をはかる。
  4. 団体交渉を経ないで、解雇無効・地位確認の「労働審判」を地方裁判所に申立てる事も視野に入れる。
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