配置転換で給料減額
Q
配置転換で給料減額
事業再編を理由に、事務職から現業職に配置転換を求められている。配置転換にあわせて現業職の賃金になるため賃金が下がる。
A
法的ポイント
配置転換を命ずる労働契約上の根拠があるか。……多くの裁判例では、1.就業規則で配置転換を行うことを明示しているか。2.職種限定、勤務地限定の労働契約があるときは、範囲を超える配置転換命令権は承諾がなければ無効。
「労働契約法3条3項:労働契約は、労働者及び使用者が、就業の実態に応じて均衡を考慮しつつ締結し、又は、変更すべきものとする。」……均衡考慮を欠く配置転換命令権の濫用といえるかどうかは詳細の判断が必要となってくる。
「職位の降格による賃金や手当の減額」は、労働契約の内容変更であり、労働者の承諾又は就業規則に根拠がなければ無効(大阪地裁決定H112.5.30豊光実業事件)とする判決、「通常の人事権の行使として行われた降格、賃金減額」を、合理的理由があるとして有効とされた(東京地裁判決H11.1.29上州屋事件)もあり、賃金削減の合否は、「降格」の根拠の有効・無効に連動して判断される傾向にある。
「単なる職務内容の変更である配置転換に伴う賃金削減」は、配置転換と賃金は別個の問題であり、配置転換に伴って直ちに賃金減額処分に服さなければならないものではない。使用者は、特段の事情がない限り従前の賃金とする契約上の義務を負っている。(東京地裁決定H9.1.24デイエフアイ西友事件、東京地裁判決H11.11.26東京アメリカンクラブ事件、仙台地裁決定H14.11.14日本ガイダント事件、東京地裁決定H14.6.21西東社事件)
メレスグリオ事件(東京高判平成12年11月29日、労判799号17頁)
「配転命令自体は権利濫用と評されるものでない場合であっても、懲戒解雇に至るまでの経緯によっては、配転命令に従わないことを理由とする懲戒解雇は、なお。権利濫用としてその効力を否定されうると解すべきである。」「被控訴人(使用者)は,控訴人(労働者)に対し、職務内容に変更を生じないことを説明したにとどまり、本件配転後の通勤所要時間、経路等、控訴人において本件配転に伴う利害得失を考慮して合理的な決断をするのに必要な情報を提供しておらず、必要な手順を尽くしていないと評することができる。このように、生じる利害得失について控訴人が判断するのに必要な情報を提供することなくしてされた本件配転命令に従わなかったことを理由とする懲戒解雇は、性急に過ぎ、生活の糧を職場に依存しながらも、職場を離れればそれぞれ尊重されるべき私的な生活を営む労働者が配転により受ける影響等に対する配慮を著しく欠くもので、権利の濫用として無効と評価すべきである。」
アドバイス
単なる配置換は使用者の裁量権が広く認められることが一般的であるが、配置転換に賃金減額がともなう場合は、勤務先の賃金規定において職種の違いによる賃金減額の根拠が確認できるか否かを確認することが重要です。
配置転換を拒否した場合、業務命令拒否を理由に解雇権を行使することは可能ですが、「業務上の必要性」「不当な動機・目的」「通常甘受すべき程度を著しく超える不利益」の事情を考慮して「配置転換命令権の濫用」として無効となる場合もあります。