最低賃金の計算方法がよくわからない
Q
最低賃金の計算方法がよくわからない
営業職で働いています。基本給は残業手当込みで10数万円の固定給でノルマによる営業手当でようやく生活できる賃金となっています。
ノルマが達成できないと、とても生活できる賃金ではないのです、これって最低賃金を違反していないのですか?
最低賃金の計算の仕方を教えてください。
もしも違反していれば、過去にさかのぼって請求できるのですか?
A
法的ポイント
基本給に残業代を含めて支給すること自体は、違法ではありませんが、基本給に残業代を含めて支給する場合は、基本給の内訳を所定労働時間に対する賃金と残業時間(時間外労働)に対する賃金を明確に区分して支給する必要があります。
基本給に残業代を含めているとしているだけで、所定労働時間と残業時間(時間外労働)の賃金が明確にされていないものは残業代込みの賃金とは言えません(残業手当の代替性無し)。つまり、残業何時間分に相当する定額(固定)残業手当なのか?が、従業員個々に異なるので、会社として、その程度が説明できる状態で無ければなりません。
基本給に残業代が含まれている場合、上述した観点で所定労働時間に対する賃金、残業時間(時間外労働)に対する賃金が明確に区分されて支払われているのかを確認する必要があります。
その上で「残業手当を込みで月給いくら」という場合には、基本給と定額(固定)残業手当の線引きが必要となりますので定額(固定)残業手当の計算をすればよいでしょう。
それは、あらかじめ含まれる1ヵ月間の残業時間と1ヵ月平均所定労働時間をもとに、次の算式で総支給額から逆算することができます。
1ヵ月平均所定労働時間 | …A 160h |
あらかじめ含まれる1ヵ月あたりの残業時間 | …B 20h |
総支給額(割増賃金の算定基礎から除外される手当を除く) | …C 16万円 |
定額(固定)残業手当 | …X |
(C-X)÷A×1.25×B=X (16-X)÷160✕1.25✕20=X (16-X)=X 160 25 160X=(16-X)✕25 |
アドバイス
上記の点を踏まえた上で、給料のどの部分を対象として最低賃金と比較すればよいかを考えてみます。
法律では、最低賃金の対象となる賃金は、毎月支払われる基本的な賃金に限られます。
具体的には、基本給と諸手当(ただし、精皆勤手当、通勤手当、家族手当などを除き、営業手当などは含まれます。)が対象となります。
逆に、以下の賃金は最低賃金の対象から除外されます。
- 臨時に支払われる賃金 結婚手当など
- 1ヶ月を超える期間ごとに支払われる賃金 賞与など
- 時間外労働、休日労働及び深夜労働の手当など
- 精皆勤手当、通勤手当及び家族手当
なお、食事手当は最低賃金に含まれる場合があります。
となっていますので、基本給から残業代を除いた部分で判断することになります。
さらに、この相談者のケースの場合、営業手当がノルマの達成度合いにより増減しますので、基本給から残業代を除いた部分と営業手当の合計額を計算し、時間額に換算した金額が、最低賃金を下回るかどうかを月によって判断することになります。
なお最低賃金額との比較において、賃金の計算方法により次の方法で計算します。
- 時間給制の場合…時給額≧最低賃金額(時間額)
- 日給制の場合…日給÷1日の所定労働時間≧最低賃金額(時間額)
- 月給制の場合…月給÷1ヶ月の平均所定労働時間≧最低賃金額(時間額)
最低賃金額については静岡県内のすべての労働者に提供される「地域別最低賃金」と特定の産業に働く労働者に適用される「特定(産業別)最低賃金」があります。
詳しくは、下記の静岡労働局のURLからご確認下さい。
https://jsite.mhlw.go.jp/shizuoka-roudoukyoku/roudoukyoku/roudou/chingin.html