残業は30分を超えないと付かないのに、遅刻は1分から賃金カット?
Q
残業は30分を超えないと付かないのに、遅刻は1分から賃金カット?
所定労働時間が1日8時間で、週5日の勤務。残業は8時間を30分越えないと付けてもらえず、20分程度の残業は全て捨てている。しかし、遅刻をした場合は1分遅れただけで30分引かれてしまう。不合理だと思うのだがどうか?
A
法的ポイント
労働時間管理の大前提は1分単位となります。この相談は、「残業の端数処理」と「遅刻した場合の賃金の扱い」の二つに分けて考える必要があります。
まず、残業代の端数処理についてですが、過去の行政通達により残業時間は1日ごとに端数処理するのではなく1ヶ月の合計を算出した際の状況によります。その状況により、
- 1時間未満の端数がある場合に、30分未満の端数を切り捨て、30分以上を1時間に切り上げることとなります。 また、これをもとに残業代を算出して
- 1円未満の端数が生じた場合は、50銭未満を切り捨て、それ以上を1円に切り上げることとなります。(労基発第150号)
次に、遅刻した場合の賃金の取扱いについてですが、賃金は労働の対価として支払われるものであることからすると、遅刻した時間分以上の賃金を支払わないということは許されません。賃金の支払いについては、労基法第24条に「賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を、毎月1回以上、一定の期日を定めて支払わなければならない。(賃金の五原則)」と規定されています。
ただし場合によっては、懲戒処分としての減給である場合は別扱いとなるので注意する必要があります。
- <関係法令等>
- 1.民法第624条1項
2.労働基準法第24条(賃金の支払) 第91条(制裁規定の制限)
3.労基発第150号(昭和63年3月14日)
アドバイス
このケースの場合のように、30分未満の残業を切り捨てているのは違法であり、未払い賃金として請求権は認められます。 請求をしなければ未払いのままとなってしまいますので要注意です。
他方、使用者にも働き方改革の進展に伴い、「適正な労働時間管理」が求められていますので、参考にしてください。
【労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置 に関するガイドライン】
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11200000-Roudoukijunkyoku/0000149439.pdf
次に実際の遅刻時間を越えて賃金を差し引かれることについてですが、ポイントでも説明したように、制裁としての減給とみなされる場合がありますが、この場合就業規則において制裁規定が定められているかを確認することが重要となります。
その上で就業規則に定められていれば、労働基準法第91条の「制裁規定の制限」の範囲内で判断することになります。
同法では、制裁として減給を行う場合、1事案に対する減給が平均賃金の半日を超えることを禁止し、複数事案に対する減給であっても、総額が、一賃金支払期における賃金の10分の1を超えることも禁止しています。