雇用調整助成金をもらいながらの残業は許される?
Q
雇用調整助成金をもらいながらの残業は許される?
震災や円高などの影響で、勤務先の工場の仕事の量が薄くなってきたため、就業時間の短縮や休業を余儀なくされました。会社側は対策として雇用調整助成金の申請をしたとの報告があり、その後、残業は一切無くなりました。
しかし、最近、ようやく生産個数が増加して、その結果、残業をせざるを得なくなってきました。
すると会社から「残業をすると雇用助成金を貰えなくなるから、定時時刻で一度タイムカードを押し、その後、残業してほしい」と指示されました。
こういう事は許されることではないと思うのですが・・・・。僕たち残業代を支払ってもらうとすれば、雇用助成金は打ち切りとなるのでしょうか?
A
法的ポイント
最初に「雇用調整助成金」について説明します。
景気の変動、産業構造の変化その他経済上の理由により、事業活動の縮小を余儀なくされた事業主が、雇用する労働者を一時的に休業、教育訓練、出向させた場合、賃金の一部を助成する制度です。
【主な受給要件】
- 雇用保険適用事業主であること
- 売上高又は生産量などの事業活動を示す指標について、その最近3か月間の月平均値が前年同期に比べて10%以上減少していること。
- 雇用保険被保険者数及び受け入れている派遣労働者数による雇用量を示す指標について、その最近3か月間の月平均値が前年同期に比べて、中小企業の場合は10%を超えてかつ4人以上、中小企業以外の場合は5%を超えてかつ6人以上増加していないこと。
- 実施する雇用調整が一定の基準を満たすものであること。
〔1〕休業の場合
労使間の協定により、所定労働日の全一日にわたって実施されるものであること。(※1)
※1 事業所の従業員(被保険者)全員について一斉に1時間以上実施されるものであっても可。
〔2〕教育訓練の場合
〔1〕と同様の基準のほか、教育訓練の内容が、職業に関する知識・技能・技術の習得や向上を目的とするものであり、当該受講日において業務(本助成金の対象となる教育訓練を除く)に就かないものであること
(※2)
詳しくは教育訓練の判断基準[PPT形式:209KB]をご参照ください。
※2 受講者本人のレポート等の提出[PDF形式:658KB]が必要です。
〔3〕出向の場合
対象期間内に開始され、3か月以上1年以内に出向元事業所に復帰するものであること。 - 過去に雇用調整助成金の支給を受けたことがある事業主が新たに対象期間を設定する場合、直前の対象期間の満了の日の翌日から起算して一年を超えていること。
このほかにも、雇用関係助成金共通の要件などいくつかの受給要件がありますので、詳しくは下記の「お問い合わせ先」にお問い合わせください。
雇用関係助成金共通の要件[PDF形式:390KB]
【受給額】
受給額は、休業を実施した場合、事業主が支払った休業手当負担額、教育訓練を実施した場合、賃金負担額の相当額に次の(1)の助成率を乗じた額です。ただし教育訓練を行った場合は、これに(2)の額が加算されます。(ただし受給額の計算に当たっては、1人1日あたり8,370円を上限とするなど、いくつかの基準があります。)
休業・教育訓練の場合、その初日から1年の間に最大100日分、3年の間に最大150日分受給できます。出向の場合は最長1年の出向期間中受給できます。
助成内容と受給できる金額 | 中小企業 | 中小企業以外 |
---|---|---|
(1)休業を実施した場合の休業手当または教育訓練を実施した場合の賃金相当額、出向を行った場合の出向元事業主の負担額に対する助成(率) ※対象労働者1人あたり8,370円が上限です。(令和2年8月1日現在) | 2/3 | 1/2 |
(2)教育訓練を実施したときの加算(額) | (1人1日当たり) 1,200円 |
詳しくは、お近くのハローワークにお問い合わせください。
尚、新型コロナウイルス感染症拡大に伴う雇用調整助成金の特例措置については、状況により変更されますので厚生労働省ウェブサイトにてご確認下さい。
雇用調整助成金(新型コロナ特例)|厚生労働省 (mhlw.go.jp)
アドバイス
ご相談のあった時間外労働と休業等の相殺についてですが、事業活動の縮小を余儀なくされ、休業または教育訓練を行う事業主が、休業等を実施する一方で時間外労働および休日の労働が行われることは一般的に考えられないことから、原則として、当該休業等を行った時間数と時間外労働を行った時間数を相殺していました。
しかしながら、平成21年3月13日から時間外労働の相殺が廃止されました。
「残業をすると雇用助成金を貰えなくなるから、定時時刻で一度タイムカードを押し、その後、残業してほしい」との社長の発言は、雇用調整助成金の「不正受給」ならびに残業代不払いの可能性がありますので注意が必要です。
会社に事情を聞くとともに、ハローワークにお問い合わせすることをお勧めします。