パワハラで退職
Q
パワハラで退職
営業所長からパワハラを受けている。些細なミスと自分では思っているが、「役立たず」「いい年をしてこんなこともわからないか」などと若い人がいる前で叱責され、その後も、なんだかんだと嫌味を言われたり、「共稼ぎで楽勝だね」「営業所を変わる気はないか」などと嫌がらせも受けている。
だんだん耐えられなくなってきたため、退職も考えるようになった。退職した後に、「退職に追い込まれた」として損害賠償請求・慰謝料請求はできないか。
A
法的ポイント
「退職に追い込まれた」が「退職の強要」「解雇」であると判断できれば、労働契約法16条(解雇)「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。」として争うことも可能となる。
あるいは、経過(嫌がらせ)と結果(退職)が、民法709条(不法行為による損害賠償)、民法710条(精神的な損害の賠償=慰謝料)、民法91条(任意規定と異なる意思表示)、民法90条(公序良俗)「公の秩序又は、善良の風俗に反する事項を目的とする法律行為は、無効とする。」にあたるかが争点となる。
最高裁判例:S55.7.10下関商業高校事件、S62.9.18大隈鐵工所事件
アドバイス
退職届に「私事都合により退職」と記されていた場合は、「嫌がらせによる退職強要」の主張を立証することがかなり難しくなります。
退職届の理由に、「上司からの執拗な退職勧奨により退職」位の表現で記載されていれば、「退職の強要」があったとの証拠の一つにはなります。
パワハラ問題は、当事者同士が「言った、言わない」で対立し、同僚等の証言がないと明確な立証ができないケースが多く、使用者側から、社員の証言として「問題は労働者の方にあった」と反撃されるケースも多々あります。
立証の力になるのは、「いつ、どこで、だれとだれが、どのようなやり取りが」あったか、冷静にメモすることです。場面の後でもいいですから、メモすることを薦めます。
退職に追い込まれたとして、損害賠償請求・慰謝料請求に該当すると考えた時は、弁護士に相談することを薦めます。