仕事の有無が前日にならないとわからない(警備業)
Q
仕事の有無が前日にならないとわからない(警備業)
私は、警備会社の正社員です。勤務先がほぼ毎日変更になるため、月の勤務日数と勤務時間は、前日に上司から連絡があります。もちろん、仕事の無いときは「休んでほしい」と言われ、もちろんその日の給料は支払われません。ですから、収入も安定していませんし、予定も全く立てられません。
このような状況を打開するためには、どうすればよいのでしょうか?
A
法的ポイント
- 労働基準法第15条「労働条件の明示」
- 労働基準法施行規則第5条「労働条件」
- 労働基準法第26条「休業手当」
- 一般的に「警備」と言ってもいくつかの業務内容があり、「警備業法」には次のように記されています。
1号警備・・・施設常駐警備業務・空港保安警備業務・巡回警備業務・機械警備業務
2号警備・・・交通誘導警備、雑踏警備業務
3号警備・・・貴重品運搬警備業務・核燃料等運搬警備業務
4号警備・・・ボディーガード・スクールバス同乗による警備等 - このケースのように、勤務の時間や場所の連絡が前日に上司からあるようなやり方は、短期契約が多い2号警備の業務に多く見られます。例えば公共事業として公道の補修工事等の現場で通行車両の誘導を行う仕事や、花火大会やフェスタなどのような一過性のイベント会場における雑踏警備で、こうした警備業務は出勤先や出勤時間も契約毎に変わることになります。
- こうした2号警備業務だけを仕事としている場合に多く見受けられるのは、仕事が無いときには会社からの仕事の連絡が無く、休日扱いとされて賃金はもとより労働基準法に定められる「休業手当」も支払われないという実態です。また、ある月はひと月当たりの労働日数が極端に少なくなったりして、厚生年金と健康保険の加入義務が生ずる要件を下回ったり、雇用保険の加入義務が生ずる「週の労働時間が20時間以上」さえもクリアできないという事態も起こり得えます。そしてなによりも月々安定した賃金を確保できないことにもなります。
- このような実態を労働法から見ると、まず労働基準法第15条に規定された「労働条件の明示」に触れるという問題があります。
労働基準法第15条では、「使用者は、労働契約の締結に際し、賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければならない。」とし、明示しなければならない事項として12項目(うち必要記載事項は5項目、定めがあるばあいに記載すべき事項は8項目)と、書面による明示の方法を労働基準法施行規則第5条で示しています。
そして必要記載事項5項目の中には、休日の明示も義務付けられているわけですから、例えば休日を「土・日」とか、「年間カレンダーによる」として別に年間カレンダーを示すことによって、逆に言えば労働する日が特定できることになるわけです。
このことから、決められた(明示された)休日以外の日に仕事がないからと会社から連絡が来ず休みとなった場合は、次の問題として労働基準法第26条「休業手当」の「使用者の責に帰す休業」となり通常賃金の6割以上の休業手当の支払いが必要となります。
アドバイス
このような状況を打開するためにはどうしたらよいかとのお尋ねですが、実態は業界全体に蔓延しているとみられることを考えると、労働行政として実態を把握して警備業界にたいする適正な改善指導をさせることが必要です。
そして個々人で出来ることとしては、まず、会社に対して労働基準法に基づいた労働条件が明示してある雇用契約書や雇い入れ通知書の発行を求めることが大切ですし、もし発行しない場合は労働基準監督署に是正指導するよう求める方法もあるでしょう。
さらには、使用者の責で労働者を休業させている状況については賃金の60%以上の休業手当の支給について確認すべき事案かと考えます。
いずれにしても、業界全体の問題点に対して、声を上げたり行動を起こして社会問題にしていく必要性を感じます。